営業力で勝負する会社
平和タクシー株式会社(静岡県)


伊豆の玄関、沼津、三島で営業をしているとドライバーには垂涎の的、黄金の人々である観光客が行き過ぎていく。
一日貸切数万円の売上、後発のわれわれがいかにこの宝の山を奪取できるか。中途入社の川口営業部長はまず唸り、そして果敢に挑戦した。




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伊豆の観光タクシーは電鉄バス会社系の寡占状態である。
伊豆箱根鉄道、富士急、伊豆急、箱根登山鉄道系など眼前にメジャーがそびえたつ。しかしイメージだけで恐れているだけかもしれない。
意外と解剖してしまうと中身は人間の身体と同じで変わりはないかもしれない。そう思い、実際に客を装い、何社、何台にもテスト乗車してみた。
案の定、このレベルなら模倣できる。キャッチアップ可能だ。川口部長は確信する。


早速、川口部長は全国から教育マニュアルを手に入れ、意識、マナー、そして知識習得へとステップアップさせていった。しかし、この仕事は労働集約的にてドライバーの個人スキルに依存せざるを得ないことに早々に気がつく。
これでは他社との差別化はできない。同じものならあえて取引先を変える必要はない。それではいかにお客様の開拓をするか。結論は単純であった。
「営業だ、営業力で勝負だ。」 実は川口部長は異業種での名うての営業マンであった。それからはひたすら全国の旅行会社、中間業者、そして一般法人へと鬼の営業が始まる、このチラシ一枚持って。
しかし結果は面白い様に顧客の囲い込みに成功していく。まさに一人旅、赤子の手をひねるがごとくである。なぜならこの業界には営業のプロは存在しなかったのだ。
そして川口部長の営業ツールは今もこのチラシのみである。

タクシー業界では営業を育てる風土がない。営業の常識である、新規の飛び込み、継続的な訪問、顧客満足への飽くなき追求など、経営者を筆頭に誰も教える人がいない。
所詮顧客への挨拶レベルである。したがって営業を強化するには異業種からのヘッドハンティングしかない。
しかし営業へ所遇、給与体系が確立していないため、満足いく待遇を与えられない。ここは思い切って営業のみは他社に先駆け特別待遇をも考慮し、採用努力をするべきである。
少々、異業種では戦力にならなかった人物でもタクシー業界では重宝するかもしれませんぞ。